2、3日前の朝日新聞に特集記事に大きく、これまでの日本のノーベル物理学賞受賞者の研究の系譜が書かれていました。
源(みなもと)は仁科芳雄博士(理化学研究所の創始者で日本理論物理学の父とされる)から、湯川秀樹、朝永信一郎の各博士、そして今回の受賞の先生方までの流れが説明されていました。

仁科芳雄先生は、東京帝国大学で電気を学び、ヨーロッパへ留学されていて、当時、量子力学の発見が相次いだ最中、まさにそのメッカであるニールス・ボーア研究所に滞在して研究をされていました。

この研究所の自由さには、かなり感銘を受けられ、日本に戻ってから財閥にかけあって資金を出してもらい、初めて、理化学研究所という基礎的な研究の組織を作られました。

仁科先生は、1931年(昭和6年)わずか1か月間京都大学で量子力学の講義をされたのですが、そのとき学んだ人たちが湯川さん、朝永さんたちです。この1か月の滞在がなかかったら、ひょっとして、日本の物理学は・・・と考えてしまいます。

このときのいきさつは、国立科学博物館の記事に書かれています。

ノーベル賞日本人受賞者7人の偉業【朝永振一郎】

仁科さんは、ニールス・ボーア研究所にいらっしゃったときには、すでに30歳を過ぎ、この分野では高齢(失礼?)でいらして、研究成果を得るのに、とてもプレッシャーがあったのではないか、と思われます(これ以降は私の大学時代に西岡先生からうかがった話です)。

ニールス・ボーア研究所は、いわば量子力学を確立した研究所です。20歳そこそこの若者たちが1年くらい滞在して、成果を出して、自分の国に帰っていく、すごいところでした。仁科さんは、電気といってもエレクトロニクスではなく、大電力の方を学ばれ、年齢も高くなっています。

でも、唯一の日本人として、朝から晩まで研究に格闘されました。

完全自由放任といってもいいかもしれませんが、ニールス・ボーアは本当に研究者を育てる天才のような方でした。

仁科さんはクラインという人と研究を行っていました。朝、研究所に来たときにクラインと顔を合わせて、帰る時に、計算結果を突き合わせる、ということを続けていたそうです。なかなか、二人の計算が合いませんが、ついに二人の計算がぴったり一致するときがきました。

これが、クライン・仁科の式というものです。

これで、仁科さんも日本へ帰ることができたのですが、日本にはこのような自由な研究所はありません。そこで、財閥に頼んで回って、ついに理化学研究所を設立できた、という経緯だったそうです。

その仁科先生ががっくり肩を落とし、英文雑誌の表紙(タイムだったか)を飾ったそうです。

それは、終戦により、日本が行っていた原子物理の実験施設を進駐軍が取り押さえ、核武装できないよう東京湾に沈めていたときのシーンなのです。

このような物理学者たちの裏話を、よく学生時代、西岡先生からうかがいました。

日本の物理学者だけでなく、交通事故にあい、(ソ連の)クレムリンからの連絡で一大脳外科チームが結成されモスクワへ送られることになったランダウ博士の話、女性をめぐる決闘の前日、友人に自分の理論(5次以上の方程式には解の公式は存在しないことを証明するなどの群論のもと)を手紙で書いて送ったが、その決闘のため20歳の若さで亡くなったガロアの話などきりがありません。

私が2年間の青年海外協力隊活動を終えたとき、アフリカからデンマーク経由で帰ることにしました。そのため、公用旅券を一般旅券にするためケニア・ナイロビの日本大使館へ立ち寄ることにしました。理由はもちろん、物理を学んだものとして、ぜひ、一度、ニールス・ボーア研究所を見てきたかったからです。

茶色い建物は、外観だけ眺めるだけでした。そのあたりでは何の変哲もない建物ですが、物理を学ぶ、学んだ者にとっては、自由の城」です。この感触は、お参りしたかった神社かお寺に来たようなものかも知れません。

このように、私たちは、物理も、歴史も、地理も、知ったり、見たり、触れたり、そして思いめぐらしたりできるのです。

今日は、ノーベル賞授賞式の日です。

あらためまして、南部陽一郎先生、益川敏英先生、小林誠先生、下村脩先生、おめでとうございます!!!!

↓リンクをクリックしてください。1票が投じられます。↓
人気ブログランキングへ

One Response to “ニールス・ボーア研究所と仁科芳雄博士”

  1. SALTY-SALTY Says:

    記事を拝読し、開拓者という言葉を思い出しました。

    この記事は、息子にとっては大きな励みになると思います。息子もまた、量子力学などに興味を持っているからです。

    ノーベル賞授賞式の今日、この記事を読んでたくさんの
    生徒・学生が研究職をめざすかも。。。ですね。

    ここ東海地方では、連日先生方のニュースが流れています。昨日、日本語で講演された益川敏英先生のお話は、とっても好感をもって受け入れられています。

    何にしても、とっても嬉しい日です。

Leave a Reply

You must be logged in to post a comment.