オバマ勝利演説分析:3点列挙法(2)
2009 年 1 月 20 日
オバマ氏のシカゴでの勝利演説の冒頭部分の3点列挙法の3番目について解説します。
It’s the answer that led those who’ve been told for so long by so many to be cynical and fearful and doubtful about what we can achieve to put their hands on the arc of history and bend it once more toward the hope of a better day.
これらの答えのおかげで、あまりに長い間、あまりに多くの人々から、できることでありながら(それをせずに)、冷めた目で(シニカルに)見たり、不安感を持って、あるいは懐疑的にながめるようなものだった「歴史の弧(アーク)」をぐいっと曲げて、良い日の希望へと向けることができたのです。
少し、むずかしい表現です。
しかし、ここで、明確に「希望」を語っています。また、因果(原因と結果)を説明しています。
「長蛇の列を作った人々」(1番目)が答えであり、「さまざまな属性の『合衆国』の構成員たちの実行」(2番目)が答えであり、それらの答えの存在自体が、歴史を正しい方向へと正した(3番目)、とつないでいきます。
1、2、そして3へと因果を説明しながら、音(発声)では、
It’s the answer … を3連発しています。
そして、冷めた見方や不安感や疑念を打ち払ったのは合衆国国民だと断言しています。
この表現の存在のおかげで、後で「your victory」という言葉が出てきたときに、まったく違和感を生じません。そして、結論的な表現である「Yes, we can.」へとつながっていきます。
深い構成です。熟考して作り上げた「詩」です。
・・・
さて、「詩」そして「3番」とくれば歌の話を思い出しました。
歌を歌うときなど、気づかれたことはありますか?
1番、2番、そして3番まであるのが普通です。
その中で、ふつう、3番の歌詞が一番大切です。
極論をすると、3番の詩を印象的に伝えるために、1番と2番がある、と言ってもいいかも知れません。特に演歌は。
たとえば、古賀政男・美空ひばりの「悲しい酒」の3番。
詩の内容を思い出されますか?
あの、どうしようもないつらさ、悲しさを伝えるために、この詩が作られています。3番を伝えるために、イントロがあり、1番があり、2番があるのです。
・・・
3点列挙法を見事に駆使するバラク・フセイン・オバマ氏は今日20日、大統領に就任します。
就任の式典は日本時間の明日未明ですが、アメリカだけでなく世界中を引き付けるものがあります。
イントロだけでなく、すばらしい1番、2番、そして3番を演奏してほしいと思います。
振り返って、日本の事情はどうでしょうか?
「あなたとは違うんです」と言って辞めた前首相。
「言明できない」とか「いかがなものか」、あるいは「悪いのはそちらのほうなのを忘れないでほしい」と質問者へ返す現首相の答弁。
何が問題なのでしょうか。
人の「共感」を得て、人の「同意」を得て、「希望」を持って政治を行わなければならない、それによって、初めて成功する、という認識が欠如していないでしょうか。
まず、痛みが分かる(共感できる)必要があります。
これがエンパシー(共感)です。
そして希望です。
それらを共有しなければなりません。
オバマ氏は、リンカーンやキング牧師、ケネディーたちを引き合いに出すことで、心の中に存在する希望の振動を呼び起こしています。
批判にカチンときても、「あなたとは違うんです」とは決して言ってはいけないのです。
多くの人と仕事を行う場合、共感と希望を持っていることをしっかりと認識したうえで、課題に取り組まなければなりません。
まず、問題の所在をつかみます。取り組むべき課題をあげます。その課題をシェアします。課題や取り組む内容について情報を共有し、その上で仕事を分担します。さらに、時折、チェックをして評価をし、フィードバックをかけます。
オバマ氏は生きているアメリカ大統領を全員呼び出しました。そして、独立宣言を出したフィラデルフィアからワシントンに入りました。
「歴史的な事実」も共感・共有しうる財産として「再利用」しています。国民の共感を引き出す方策を知っているのです。
彼は政治家ですが、詩人であり、演出家でもあります。
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